スーパーで買い物をしていると、なにやら少し変わったおでんを発見しました。
それが、こちら。

丸善の「鶏鍋おでん」です。
今回半額で購入しましたが、元は862円とのことで、市販のおでんパックのなかではなかなかいいお値段のする部類。
普通のおでんは、昆布やかつお節を中心とした出汁で作るイメージがあります。
しかし、こちらの商品は名前のとおり、鶏の出汁を使ったおでんとのこと。
鶏鍋なのか、おでんなのか。
二つの鍋料理を力技で合体させたような名前ですが、こういう食べ物を見つけると、ひとつ気になってしまうことがあります。
鶏出汁で作るおでんには、何か元ネタとなる郷土料理があるんじゃないか?
というのも、以前いいだこのおでんを作った際、その元ネタが香川にあると知ったため。
この鶏出汁おでんは完全に商品のオリジナルなのか。
それとも、日本のどこかでは昔から鶏出汁のおでんが食べられているのか。
気になったので購入し、鶏鍋おでんを食べながら、おでんの歴史や地域ごとの違いについても調べてみました。
そのため、今回はこの商品の味についても感想を後半で紹介するものの、メインは鶏出汁のおでんのルーツやおでんの歴史まわりを探った、知的好奇心メインの記事となります。
若干鶏鍋おでんのPRくさい感じになっていますが、当然販売元からは一円ももらっておらず、完全に筆者の趣味です笑
それでは、いってみましょう!
丸善の鶏鍋おでんとは
今回購入した鶏鍋おでんは、チーかまやホモソーセージなどで知られる、株式会社丸善の商品です。
内容量は1,000gで2人前。

具材には、以下のものが入っています。
- 玉子
- 大根
- 昆布
- こんにゃく
- 焼きちくわ
- ごぼう巻き
- 鶏つくね
- 鶏手羽元
玉子、大根、昆布、こんにゃく、焼きちくわ、ごぼう巻き、鶏つくねはそれぞれ2個。
そこに手羽元が1本入っており、合計すると8種類15品という、なかなかのボリュームです。
袋を開けてみると、具材は二つのパックに分けられていました。

一つは、大根や玉子、こんにゃくなどの、じっくり煮込んだほうがおいしい具材。
もう一つは、ちくわやごぼう巻き、鶏肉などが入った袋です。
丸善では、これを「別鍋仕込」としています。
おでんは、すべての具材を同じ時間だけ煮ればいいというものではありません。
大根やこんにゃくは時間をかけて味を染み込ませたい一方、練り物は長時間煮すぎると、せっかくの旨味が汁へ抜けてしまいます。
煮込み時間の違う具材を別々に仕込んでいるというわけです。
レトルトおでんの袋の中でも、きちんと鍋を分ける。
人間が自宅で作るおでんより、丁寧に扱われている可能性があります。
そもそもおでんはどこから生まれたのか
鶏鍋おでんの元ネタを探す前に、まずは普通のおでんの歴史を調べてみました。
おでんの元祖は豆腐田楽だった
現在のおでんといえば、大根や玉子、こんにゃくなどを出汁で煮込む料理です。
しかし、そのルーツとされているのは、豆腐を串に刺して焼き、味噌を塗った豆腐田楽なのだそう。
「田楽」という言葉に丁寧語の「お」をつけ、「楽」を省略した女房言葉から、現在の「おでん」という名前になったと伝えられています。
つまり、おでんの始まりは煮物ですらありません。
串に刺した焼き豆腐だった料理が、数百年かけて大根や玉子が汁に沈む料理へと進化したわけです。
料理の名前というものは、意外と原形を気にせず生き残ります。
現在の煮込みおでんは明治以降に広がった
江戸時代には、豆腐やこんにゃくに味噌を塗って焼く田楽が、庶民の料理として広く食べられていました。
その後、明治時代に入ると具材が増え、汁気の多い現在のような煮込みおでんが流行します。
大正時代には関西にも広がり、各地の出汁や醤油、名産品を取り入れた、ご当地おでんが生まれていきました。
おでんは全国共通のように見えて、出汁も具材も地域によってかなり違う料理だったりします。
静岡では黒い出汁と黒はんぺん、名古屋では八丁味噌、姫路では生姜醤油、博多では餃子巻。
同じ「おでん」という名前を使いながら、各地域が好き勝手に地元の食文化を投入しています。
鶏出汁のおでんは九州に存在する
では、本題となる鶏出汁のおでんについて。
調べてみたところ、鶏出汁のおでんに近い食文化は、主に九州地方で確認できました。
農林水産省では、九州のおでんの特徴について、鶏から取ったコクのある出汁を使い、九州特有の甘い醤油で味付けすると紹介しています。
鶏出汁を使ったおでん自体は、商品のために突然発明された謎料理ではなかったということになります。
九州のおでんも地域によって違う
ただし、九州地方のおでんが、すべて同じ鶏出汁というわけではありません。
博多では餃子を魚のすり身で包んだ「餃子巻」が有名。
宮崎県の都城では、もやしやキャベツを入れたおでんが食べられています。
鹿児島では豚肉や麦味噌を使ったつゆもあり、同じ九州の中でもかなり個性があります。
九州という一つの大きな鍋の中で、各地域がさらに別の鍋を作っている状態です。
この商品が九州おでんを再現したとは限らない
ここで注意しておきたいのが、丸善の鶏鍋おでんが、九州のおでんを再現した商品なのかどうかです。
丸善の公式サイトでは、鶏がら出汁を使っていることは紹介されていますが、「九州風」や「博多風」といった説明はありません。
そのため、九州おでんが直接の元ネタであるとは断定できません。
ただし、日本には以前から鶏出汁でおでんを作る地域があり、料理として不自然な組み合わせではないことは分かりました。
結論としては、
鶏鍋おでんには、九州のおでんという近い系統の食文化が存在する。ただし、直接の元ネタかどうかは不明
というところでしょうか。
若干すっきりしない結論ですが、歴史というものは大抵、商品のパッケージほど分かりやすく書かれていません。
鶏鍋おでんを温めて食べてみる
鶏鍋おでんの正体がなんとなく分かったところで、実際に食べていきます。

今回は鍋で温めて、厚揚げも追加しています。
まずは、商品の主役と思われる鶏肉から食べてみます。

鶏肉はしっかりと煮込まれており、箸で簡単にほぐれるほど柔らかくなっています。
鶏肉はほろほろで、普通においしいです。
しかし、こちらは汁の中で煮込まれているためか、硬さやパサつきはほとんど気になりませんでした。

大根には中までしっかりと出汁が染み込んでおり、柔らかく煮込まれています。
玉子やこんにゃく、練り物についても、普通におでんの具材としておいしいです。
別鍋で仕込んでいるというだけあり、練り物が極端に柔らかくなったり、旨味が抜けたりしている印象もありません。
鶏肉も柔らかく、ほかの具材にも出汁が染みている。
普通においしいおでんです。
ただ、食べながら一つ思ったことがありました。
普通のおでんとしておいしい。
決して悪い意味ではありません。
むしろ、味としてはきちんとまとまっており、おでんとして十分おいしく食べられます。
ただ、「鶏鍋おでん」という名前から想像していたほど、普通のおでんとは違う、強烈な鶏の旨味があるわけではありませんでした。
鶏白湯のような濃厚さや、鍋の最後に残るような強い鶏の脂を期待すると、少し印象が違うかもしれません。
原材料を確認して理由が分かった
なぜ、初めて食べるはずの鶏鍋おでんを、どこかで食べたことがあるように感じるのでしょうか。
気になって原材料を確認してみると、鶏手羽元や鶏つくねに加えて、鶏スープと昆布が使われていました。

出汁の方向性としては、鶏と昆布を中心とした和風の煮物に近いわけです。
そして、ここでようやく気がつきました。
普段から自宅で作っている、鶏出汁の煮物と方向性がほとんど変わらない。
つまり、この鶏鍋おでんが普通のおでんのように感じられたのではありません。
普段から鶏と昆布を使った、鶏鍋おでんに近いものを食べていたというわけです。
鶏鍋おでんは普通のおでんと何が違うのか
今回食べた印象としては、一般的なおでんと比べて、出汁にわずかな丸みやコクがあります。
ただし、鶏の味がすべてを支配するほど強いわけではありません。
昆布や醤油、練り物から出る旨味と組み合わさることで、最終的には見慣れた和風のおでんに近い味へまとまっています。
そのため、鶏出汁を使った煮物を普段あまり食べない方であれば、普通のおでんとの違いを感じやすいかもしれません。
一方、鶏肉と昆布を使った煮物や鍋をよく作る方にとっては、かなり馴染みのある味に感じられると思います。
鶏鍋おでんは奇抜なおでんではなく、鶏のコクを足した食べやすい和風おでんと考えるのが近そうです。
終わりに
今回は、スーパーで見つけた丸善の鶏鍋おでんを食べてみました。
味については、鶏鍋おでんという名前から想像するほど強烈な個性はなく、普通のおでんとしておいしいというのが正直な感想です。
その理由を調べてみると、出汁の軸は鶏と昆布。
普段から鶏出汁の煮物を作っているため、自分にとっては食べ慣れた味だったようです。
また、鶏出汁を使ったおでんに近い食文化は、九州地方にも存在します。
今回の商品が九州のおでんを直接再現したものかは分かりませんが、鶏出汁のおでん自体は、日本の食文化から外れた料理ではありませんでした。
ちなみに、当ブログでは筆者の料理研究の末にたどり着いたガチレシピや、飲食店の再現レシピなども公開していますので、是非ともサイトをブックマークしてご覧いただければと。
それではー。
参考資料
農林水産省「寒い冬にもってこい!おでんを学んで楽しもう!」
農林水産省「うちの郷土料理 おでん 東京都」
株式会社丸善「鶏鍋おでん」




