魚介類を異様なまでに取り上げ続ける当ブログ。
スーパーの鮮魚コーナーで、丸々としたイサキを発見しました。

イサキといえば、刺身や煮付けなど、さまざまな料理で食べられる白身魚。
その中でも、定番中の定番といえるのが塩焼きです。
塩を振って魚焼きグリルに入れる。
作り方だけを聞けば、これ以上ないほど単純な料理です。
しかし、単純な料理ほど、下処理や塩の量、置く時間、火加減によって仕上がりに大きな差が出ます。
適当に塩を振って焼いても、それなりにはおいしい。
それでも、せっかくイサキを丸ごと焼くのであれば、皮は香ばしく、身は柔らかく、魚の旨味を最大限に引き出したいところ。
そこで今回は、イサキの特徴や塩焼きがおいしい理由を調べつつ、実際に焼き方を考えた結果、現時点で最もおいしいと考える「究極のイサキの塩焼き」を作っていきます。
それでは、いってみましょう!
そもそもイサキとはどんな魚なのか
実際に調理する前に、まずはイサキがどのような魚なのかを見ていきます。

イサキは、イサキ科に分類される海水魚です。
主に潮通しのよい沿岸の岩礁地帯で生活しており、複数のイサキが群れを作って泳いでいます。
日中は海底や岩礁の周辺にいることが多く、夜になると海面に近い場所まで移動して、小型の甲殻類や動物性プランクトンなどを食べるとのこと。
成魚のイサキは、黄土色から灰色がかった、比較的落ち着いた見た目をしています。
しかし、幼魚の頃は体に三本ほどの黄色や暗褐色の縞模様があります。
その模様がイノシシの子どもに似ていることから、小さなイサキは「ウリボウ」や「イノコ」と呼ばれることもあるそうです。
成長すると縞模様は次第に薄くなっていきます。
水族館などで縞模様のあるイサキを見かけた場合、まだ若い個体である可能性が高いです。
イサキの旬は、一般的に5月から6月頃の初夏とされています。
梅雨の時期に旬を迎えることから、脂が乗ったイサキは「梅雨イサキ」とも呼ばれます。
産卵前のイサキは、体に栄養と脂を蓄えており、身の旨味も強くなるのだそう。
究極のイサキの塩焼きの結論
今回、実際に調理方法を考えた結果、イサキの塩焼きをおいしく作るポイントは、以下の五つにまとまりました。
- 魚の重量に対して1.2~1.5%の塩を使う
- 塩を振って冷蔵庫で1~2時間置く
- 出てきた水分を焼く前に完全に拭き取る
- 酒を薄く塗り、皮を強火で香ばしく焼く
- 脂が少ない個体には、仕上げに米油を数滴足す
特別な調味料は使いません。
必要なのは塩、酒、そして必要に応じて少量の米油だけ。
材料を増やすのではなく、塩と時間と火加減を細かく調整することで、イサキの持つ味を引き出していきます。
究極のイサキの塩焼きの材料
今回使用する材料はこちらです。
- イサキ:1尾
- 塩:下処理後の魚の重量に対して1.2~1.5%
- 酒:小さじ1~2程度
- 米油:数滴
30cm前後のイサキであれば、塩はおおよそ8~12gが目安です。
あっさり食べたい場合は1.2%。
塩味をやや強めにして、ご飯や酒と合わせたい場合は1.5%に近づけるとよいかと思います。
塩を感覚だけで振ると、毎回味が変わります。
究極を名乗るのであれば、魚も塩も一度は量ったほうが安全でしょう。
イサキの究極の塩焼きの作り方
1.ウロコ、エラ、内臓を取り除く
まずは、イサキのウロコを包丁やウロコ取りで取り除きます。
イサキはヒレが鋭いため、手を刺さないように注意してください。
続いて、エラぶたを開き、エラの付け根を切って取り外します。
腹側には浅く切れ目を入れ、内臓を取り除きます。
内臓を取り除いた後は、背骨の内側に残っている血合いにも包丁の先で軽く切れ目を入れ、流水で洗い流します。

この血合いや内臓の残りは、焼いた際の臭みにつながるため、できる限りきれいに取り除きましょう。
魚を洗い終えたら、表面と腹の中の水分をキッチンペーパーでしっかりと拭き取ります。
ここで水分が残っていると、塩が薄まり、皮も香ばしく焼けません。
若干面倒ですが、塩焼きの完成度は、この地味な作業にかなり左右されます。
2.魚の重量に対して1.2~1.5%の塩を振る
下処理を終えたイサキの重量を量り、その重量に対して1.2~1.5%の塩を用意します。
塩は魚の表面だけでなく、腹の中にも振っていきます。
表面については、魚から30cmほど上の位置から塩を振ると、全体へ均等に広がりやすくなります。
ヒレや頭の周辺は身が少ないため、胴体より少し控えめで構いません。
逆に、身の厚い背中や腹の周辺には、やや丁寧に塩を振ります。
塩焼きはほとんど塩のみの味付けなので、キッチンソルトではなく、旨味のある釜炊きの塩や岩塩を使用することをオススメします。
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ちなみに筆者は、サラサラしていた方が調理に使いやすいので、岩塩を使用しています。
3.冷蔵庫で1~2時間置く
塩を振ったイサキは、バットや皿に乗せ、ラップをせずに冷蔵庫へ入れます。
置く時間は、魚の大きさにもよりますが、1~2時間ほど。
塩を振ってすぐに焼く方法もありますが、それでは塩味が表面に残り、身の中まで十分になじみません。
時間を置くことで、塩が身へゆっくり入り込み、同時に魚の余分な水分が表面へ出てきます。
この水分には、魚の生臭さにつながる成分も含まれています。
塩は味を付けるだけでなく、余分な水分と臭みを取り除くためにも使うというわけです。
4.出てきた水分を完全に拭き取る
1~2時間置くと、イサキの表面に水分が浮き出てきます。

この水分を、キッチンペーパーで丁寧に拭き取ります。
腹の中にも水分がたまりやすいため、忘れずに拭いておきましょう。
今回は塩味を身へ残したいため、水で洗い流さず、ペーパーで拭き取るだけにしています。
表面が湿ったままだと、焼いたときに魚が蒸されたような状態になり、皮がパリッと仕上がりません。
焼く前には、表面がさらりとするまで水分を取り除いてください。
5.焼く約30分前に冷蔵庫から出す
水分を拭き取ったイサキは、焼く約30分前に冷蔵庫から出しておきます。
魚が冷え切ったままだと、表面だけが先に焼け、身の中心まで火が入る頃には外側が乾燥しやすくなります。
わずかに温度を戻すことで、全体へ均一に火が入りやすくなります。
ただし、真夏の高温な部屋で長時間置く必要はありません。
暑い時期は15~20分程度にとどめ、冷房の効いた場所で作業してください。
6.酒を表面にごく薄く塗る
焼く直前に、イサキの表面へ酒を薄く塗ります。

酒の香りを加えつつ、焼いている間に身の表面が急激に乾燥するのを防ぐ狙いです。
刷毛がなければ、指やキッチンペーパーで軽く塗るだけでも構いません。
酒を大量にかける必要はなく、表面がわずかに湿る程度で十分です。
余分な酒が表面に残った場合は、キッチンペーパーで軽く押さえておきます。
7.予熱したグリルで皮を強火で焼く
魚焼きグリルは、イサキを入れる前に3~5分ほど予熱しておきます。
冷たいグリルへ魚を入れると、温度が上がるまでに身から水分が抜け、皮もパリッと焼けません。
グリルが十分に温まったら、盛り付けた際に表になる面を火の強い側へ向けて焼いていきます。
最初は強火で、皮が膨らみ、香ばしい焼き色が付くまで加熱します。
最初に強火で皮を焼くことで、イサキ特有の皮の香ばしさを引き出します。
片面焼きグリルの場合は、表側に十分な焼き色が付いたら裏返し、火を少し弱めて中心まで火を通します。
両面焼きグリルの場合は、そのまま様子を見ながら焼いてください。
焼き時間は魚の大きさやグリルによって大きく変わるため、時間だけで判断しないほうが安全です。
ただ、今回のような20cm~25cm程度のイサキであれば、表面6~7分、裏返して4~5分程度が一つの目安になるかと。
皮が香ばしく色付き、目が白くなり、背中の身を軽く押して弾力を感じれば、焼き上がりの目安です。
8.脂が弱ければ米油を数滴かける
焼き上がったイサキを確認したところ、今回の個体は、旬のイサキとして期待したほど脂が乗っていませんでした。
そのままでもおいしく食べられますが、少しだけコクが足りない印象です。
そこで、焼き上がったイサキに米油をキッチンペーパーで塗りました。

塗りすぎるとせっかくの皮がふやけるので、本当に数滴分で構いません。
熱い皮や身の表面へ薄く広げることで、足りなかった油分のコクを補うことができます。
そんなわけで、完成がこちら。

皮もいい感じに香ばしく焼けました。
究極のイサキの塩焼きを食べた感想
それでは、食べていきます。

まず印象に残ったのは、やはり皮の香ばしさです。
強火で表面をしっかり焼いたことで、皮には香ばしい焼き色が付き、パリッとした食感に仕上がりました。
イサキは皮に厚みがあるため、適当に焼くと少し生っぽく残ることがあります。
しかし、十分に予熱したグリルで強火から焼くことで、皮の香りと旨味をしっかり引き出せています。
今回のイサキで最もおいしかった部分は、間違いなく皮でした。
身は柔らかく、箸を入れるとふっくらとほぐれます。
味わいはクセのない上品な白身魚。
磯臭さや強い魚臭さもなく、塩だけで十分においしく食べられます。
塩を振って時間を置いたことで、身の中までほどよく味が入り、水っぽさもありません。
単に表面がしょっぱいのではなく、身自体の味が濃くなったように感じます。
また、今回の個体はそれほど脂が乗っていませんでしたが、仕上げに米油を少量加えたことで、油分の持つコクや旨味を補うことができました。
もちろん、本物の魚の脂と米油が完全に同じというわけではありません。
それでも、あっさりしすぎて少し物足りない白身魚に、満足感を加える方法としては悪くありません。
大量にかければ台無しですが、数滴なら味を邪魔せず、足りない部分だけを補ってくれます。
なぜこの焼き方がおいしくなるのか
塩を早めに振ることで水分と臭みを抜く
魚へ塩を振ると、浸透圧によって身の中から水分が出てきます。
この水分を拭き取ることで、魚の臭みを減らし、身の味を凝縮することができます。
また、余分な水分が減ることで、焼いた際に皮もパリッと仕上がりやすくなります。
塩焼きは、焼く工程よりも、焼く前の1~2時間で完成度が決まっているのかもしれません。
強火で焼くことで皮の香りを引き出す
イサキのおいしさは、白身だけではありません。
厚みのある皮と、その周辺にある脂も、イサキの重要な旨味です。
弱火で長時間焼くと、皮に焼き色が付く頃には、身の水分が失われてしまいます。
そのため、十分に予熱したグリルへ入れ、最初に強火で皮を焼く。
皮の香ばしさを先に作り、その後で中心まで火を通すのが、身を柔らかく残すためのポイントです。
米油は魚の個体差を調整するために使う
脂の少ない魚を、焼き方だけで脂の乗った魚に変えることはできません。
そこで、足りないコクだけを米油で補います。
米油は香りが比較的穏やかで、魚そのものの風味を邪魔しにくい油です。
脂がある魚には何も足さず、脂が弱い魚にだけ数滴加える。
毎回同じ手順を機械的に繰り返すのではなく、魚に合わせて完成形を調整するのが、今回の結論です。
イサキの塩焼きで避けたい失敗
焼く直前に塩を振る
焼く直前に塩を振ると、表面には塩味が付きますが、身の中まで十分になじみません。
魚の余分な水分や臭みも残りやすいため、可能であれば最低でも30分、今回の方法では1~2時間置くことをおすすめします。
表面の水分を残したまま焼く
塩を振って出てきた水分を残したまま焼くと、皮が蒸されたようになり、香ばしく仕上がりません。
焼く前に、表面と腹の中の水分を完全に拭き取ってください。
最初から弱火で焼く
弱火でゆっくり焼けば、身が柔らかくなるようにも思えます。
しかし、皮に焼き色が付くまで時間がかかるため、結果として身の水分が抜けやすくなります。
グリルを十分に予熱し、最初は強火で皮の香ばしさを作ることが重要です。
米油を焼く前から大量に塗る
脂を補いたいからといって、焼く前の魚へ油を大量に塗る必要はありません。
油が多すぎると、皮が油で揚がったような状態になり、イサキ本来の香りや塩味が分かりにくくなります。
米油は、焼き上がりを食べて脂が足りないと感じた場合に、数滴だけ使用するのがよいかと思います。
終わりに
今回は、イサキを最もおいしく塩焼きにする方法について考えてみました。
ちなみに、イサキの塩焼きを食べ終えた後には、中骨や頭が残るわけですが、三重県の鳥羽や志摩地域では、イサキの塩焼きの残った骨へ熱湯を注いだ骨のスープを、「医者いらず」と呼ぶことがあるそうです。
器へ骨を入れて熱湯を注ぎ、必要に応じて塩や醤油をほんの少し加えれば、簡単な魚のスープとして楽しめます。
なお、骨が喉に刺さらないように、スープは茶こしなどでこしてから飲むほうが安全でしょう。
興味がある方はぜひこちらも試してみていただければと。
ちなみに、当ブログでは筆者の料理研究の末にたどり着いたガチレシピや、飲食店の再現レシピなども公開しています。
是非ともサイトをブックマークしてご覧いただければと。
それではー。
参考資料
三重県「おさかな図鑑 イサキ」
桂浜水族館「イサキ 展示動物解説」
Honda釣り倶楽部「イサキの特徴」
京都府「塩焼きの作り方 イサキ」
築地場外市場「皮目の脂がいい イサキ」







