当ブログでは時折本の要約記事を書いておりますが、ビジネス本や自己啓発本がほとんどだったわけです。
今回は、初めての試みとして「児童文学」について取り上げてみたいと思います。
児童文学と聞くと、「子ども向けの幼稚な本では?」「かいけつゾロリやらズッコケ三人組?」というイメージを持たれるかもしれません。
かくいう私も小学生の頃は触れていたものの、大人になってからは読書の選択肢に入ることもありませんでした。
しかし、一度児童文学の沼にハマると、抜け出せないほどの魅力がそこにはあります。
近年だと『ハリー・ポッター』が数億部の売り上げを叩き出しましたが、それ以外にも児童文学には『ゲド戦記』『指輪物語』といったモンスター級のヒット作がその他にもたくさんあります。
また、児童文学と言えど書いているのは大人なので、子どもでも楽しめる一方で、大人が読むと非常に深く考えさせられる内容となっている作品もたくさんあります。
長らく活字離れをしている方、あるいは読書はしているけれども小説は遠のいている方にはいい導入となりえますし、普段大衆小説を読んでらっしゃる方にとっても、新鮮な体験になるかと思います。
今回はそんな児童文学のおすすめポイント3つと、具体的に僕が読んで面白かった作品を数冊紹介したいと思います。
児童文学をおすすめしたいポイント3つ
さて、魅力いっぱいの児童文学ですが、個人的におすすめしたいのは以下の3点になります。
オススメポイント① 文章量が短く表現も易しいので読みやすい
すっかり本から離れてしまって、「久しぶりに小説でも読むか」と紀伊國屋あたりで売れ筋の本を一冊手に取り、帰って読み始めるも、うまく文章が頭に入ってこないままシーンの情景も浮かばず、半分も読まないまま本棚に突っ込む。
そんな経験はないでしょうか(僕は過去何度もあります)。
久々にスポーツを始めても思うように身体が動いてくれないように、読書にしても読書の頭になるには、ある程度時間がかかったりします。
そんな読書脳にしていくストレッチの役割として、児童文学は最適の選択肢の一つと言えるでしょう。
その素晴らしさたるや、読書界のプランク、はたまた読書界の長座体前屈と呼んでいただいて差し支えありません。
なにが適しているかといえば、その文章の易しさと全体の文章量。
久々の読書に選ばれた本が『レミゼラブル』や『失われた時を求めて』ならば挫折間違いなしですが、児童文学であれば大きな活字でおおよそ200〜300ページ程度なので読了の確率が高まります。
その読了の達成感は一般書と差はありませんし、本によっては非常に高い読後感を与えてくれます。
データによると、日本人の47%は月に一冊も本を読まず、5冊読めば上位10%、7冊読めば上位4%に入るそうです。
読書を始める導入として、児童文学は良い選択肢の一つとなるでしょう。
オススメポイント②名作は大人が読んでも名作
「名作」と呼ばれるには名作たる理由があるものです。
児童文学にしても、時代を経て残るものには、それだけの魅力があるわけです。
例えば、ミヒャエル・エンデの『モモ』という作品では、経済成長に伴い資本主義に傾倒していく中で生じた、時間の欠乏感や人との繋がりの希薄さといった変化について触れています。
子どもが読むにはものすごく重いテーマですが、それが子どもでも楽しめる形でうまくまとめられています。
児童文学を読んでいると、「名作と呼ばれる作品はたくさんあるけれど、名作と呼ばれる理由は作品ごとにそれぞれ違うんだなぁ」と考えさせられます。
オススメポイント③大人を対象にした文学を子ども向けに編集したものも
児童文学の文庫からは、元は大人向けに刊行された小説を子ども向けの訳にしたり、また再編集する形で刊行されているものがあります。
ミステリーではアガサ・クリスティ、SFではH・Gウェルズ等々、錚々たる巨匠の作品たちがラインナップに揃っております。
また、岩波少年文庫から刊行されているガリヴァー旅行記では、子ども向けの翻訳に直されている他、全4遍中前半2遍のみを収録することで、文章量自体も子ども向けになっています。
児童文学文庫のものから読み始めて、面白ければ一般向けのものも手に取る、といった読み方をしても面白いかもしれません。
タピオカイズムおすすめの児童文学
では、最後に個人的に読んで素晴らしかった作品を3点だけ紹介したいと思います。
『モモ』
ハリウッドでも映画化された名作『ネバーエンディングストーリー』の著者ミヒャエル・エンデのファンタジーの一作。
売り上げは世界で1000万部を超えている名作ですね。
こちらは孤児院から抜け出した少女モモが、地域の人々と助け合いながら楽しく暮らす中、突如やってきた灰色の男たちによって時間を節約しお金を儲けるよう仕向けられ、それによって人々の意識や動きが変わってしまう姿が描かれています。
心優しくおおらかだった人々が、段々と資本主義に染まっていき欠乏感に苛まれていく姿は、とても他人事としては見れませんでした。
日本での副題が「時間どろぼうと、盗まれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」とありますが、そんな灰色の男(≒資本主義)による人々の変化と、それを戻そうとするモモの戦いが、ファンタジーの中で非常にうまく描かれています。
私も新品で購入しましたし、決して買って損はない一冊ですが、有名な作品のため図書館には置かれていると思います。
興味がある方は是非手に取ってもらえればと。
『ホビットの冒険』
言わずと知れた名作『指輪物語』の前日譚でもある作品。
発行部数はなんと一億部を超えています。
ホビット族の青年ビルボ・バキンズが魔法使いガンダルフと13人のドワーフと共に、竜に奪われた財宝を取り戻しに行く物語です。
個人的にこの作品を読んですごいと思ったところは、いい意味で「目新しさがない」という点。
というのも、現代の日本のRPGの下地にもなっているような、ファンタジーの基礎を作ったとも言える名作なので、踏襲されすぎて今読んでも逆に目新しさがなくなっているわけですね。
もちろん物語としても想像力にあふれていてすごく面白いですし、時に手に汗握る素晴らしい内容となっていますので、おすすめです。
『コンチキ号漂流記』
こちらは知名度は低いかもしれませんが、強くオススメしたい一冊。
初めて手に取った時、名前からして「少年たちがコンチキ号という船を作って航海をする話だろうな」と予想をつけてかかっていたのですが、蓋を開けてみるとびっくり。
なんと、歴史学者である著者のハイエルダールが、自らの学説を証明するために、古代ペルーの技術を使ったイカダを作り、ペルーから数千キロ離れた南太平洋の島まで航海をするというとんでもないノンフィクション作品でした。
外部との交信手段は無線機のみで、もしイカダがバラバラになってもとても助けがくるのが間に合うわけがなく、まさに命がけの航海です。
この本のすごいところは、周囲が「絶対に失敗するからやめておけ」と反対する中、ハイエルダールの尋常ならぬ熱意で航海の仲間を集め、政府を巻き込んで資材を集め、航海を完遂するところ。
読んでいる中で、流石にナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』を思い出さずにはいられませんでした。
この作品も、太鼓判を押して「買って損はない」と言える一冊になっています。
終わりに
いかがだったでしょうか。
実に魅力的な児童文学の世界に、是非一歩足を踏み入れてもらえればと思います。
それではー。