『漂流者は何を食べていたか』という本を見つけたので、何を食べていたか紹介する

書籍

当ブログでは、珍しげな魚を見つけたら、買って食べてはレビューしたりしているわけです。

そんな謎の性癖を持った筆者ですが、つい最近面白い本を読んだので紹介したいと思います。

それがこちら。

椎名誠さんの『漂流者は何を食べていたか』という本。

こちらは、漂流記マニアを自称している椎名誠さんが、これまで読んできた数多くの漂流記の内容を、「何を食べていたか」というテーマに絞って紹介している書籍になります。

私自身、以前読んだ『コンチキ号漂流記』が個人的に非常に刺さったのですが、この本でも『コンチキ号漂流記』が取り上げられていました。

『コンチキ号漂流記』については、以前書いた児童文学の記事でも紹介しているので、あらすじを知りたい方はこちらをどうぞ。

あらゆる漂流記ものを食の視点でまとめた総集編みたいな本でとても興味深かったですが、今回は、そんなあらゆる漂流記の中でも頻出する魚や生き物について、その捕獲方法や食べ方も含めて紹介していきたいと思います。

この本で紹介されている漂流記は、太平洋や大西洋での漂流と、南極といった極地での漂流とが紹介されているので、二つに分けて紹介していきます。

それでは、いってみましょう!

太平洋・大西洋漂流編

さて、広い太平洋を渡る途中、船が難破し突如漂流生活が始まるとなれば、絶望に満ちることは必定。

ちなみに漂流することになる原因の最も多いパターンは、マッコウクジラ等の巨大生物や氷塊等の障害物にぶつかると言ったもののよう。

多くの場合、そこから避難用のボートに乗り換える形で漂流することになります。

そんな辛い太平洋の漂流の中で、食事になってくれる生き物たちを紹介していきます。

シイラ

漂流記とは切っても切れない関係と言えるほど登場してくるシイラ。

ヘミングウェイの『老人と海』でも、老人が吊り上げたシイラの生肉を頬張りながら、カジキとの戦いのために体力を蓄えていたのが印象的でした。

ちなみにシイラについては当ブログでも紹介しています。

何故そこまで漂流記でよく出くわすのかと言えば、シイラは漂流物にくっついてくる習性があるわけです。

この習性は非常に面白く、ある漂流記では、船の後ろに何匹ものシイラがずっとついてきたようで、折を見てその中のシイラを捕獲して食べたそうですが、それでも変わらずついてきたそう。

あまりにも長い間旅を共にするので、乗組員たちもシイラたちと顔馴染みになり、見ただけでどの個体か判別できるまでになっていたそうです。

そんなシイラの捕獲については、釣りをして海面まで上がってきたところをタオルで掴み取り引き上げるという原始的な方法もあれば、ある日向こうから勝手に飛び込んできた水中銃で仕留めた、という記述もありました。

食べ方については、『老人と海』よろしく生でかぶりつくこともあれば、干し肉にして保存食にしたり、肝臓と心臓をレモンジュースに漬けて保存し食べているというものもありました。

トビウオ

トビウオもシイラと並んで漂流記に頻出してくる魚ですね。

というのも、トビウオは海面を跳ねるので、船板が海面の高さに近ければ、勝手に船に乗り込んでくるわけです。

そのため、朝起きたらトビウオが甲板で跳ねていて大漁だった、ということも。

トビウオはスーパーでも時々見かけますが、個人的に食べた印象は、焼き魚だと小骨と鱗が邪魔な食べにくい白身魚という印象。

生食用はあまり見かけないので、見かけたら一度食べてみたいところですね。

ウミガメ

ウミガメも、漂流記では多く登場してきました。

平和の中にいる我々は、ウミガメと聞いても「食べる」という選択肢をまず思いつかないわけですが、海のど真ん中に漂流するとあれば、そんな悠長なことも言っていられません。

そんなウミガメは、船に身体を擦り付けることも多く、船の損壊にもつながる結構危うい存在でもあります。

このウミガメについての調理は、どの漂流記も非常に描写が生なましいです。

静脈を切り落とすとどす黒い血が吹き出すらしく、そこから甲羅を剥がし肉を取り出しても、25%から30%ほどしかないそう。

また、甲羅のすぐ裏側あたりにはかなりの量の脂身があるようです。

緑がかった黄色で食べるのに怯むような見た目のようですが、食べるとなかなか美味のよう。

また、ウミガメの肝臓には毒があるらしく、捕獲した漂流者たちは皆気をつけて調理していました。

ちなみにウミガメの生肉の味は「思ったよりも柔らかく見た目に感じたほどの違和感はなかった」とのこと。

ウミガメの卵は口に入れてプチンと潰すと濃厚な味がねっとりと口一杯に広がり、美味とのことです。

ちなみにアオウミガメは肉も卵も美味しい一方、アカウミガメは卵は美味いが肉は臭みがあって食用にはならないそう。

サメ

サメも漂流物にはよく登場してきますが、こちらも食糧になります。

日本でも、よくネズミザメが食用として出回っていますね。

(個人的には特別美味しくも不味くもない肉、といった印象)

サメの捕獲には、とある漂流者はトビウオを餌にして釣りをして、船の近くまで来たらパドルを噛ませるという作戦を採用していました。

その他、尻尾を手づかみして捕獲するという大胆な捕獲法も。

案外襲ってくるサメも少ないようで、『コンチキ号漂流記』でも、最初は恐れていたものの途中からサメに物をぶつけて遊んでいる描写などがありました。

海を飛ぶ鳥も食糧になります。

逞しくも、漂流者たちは素早く足を捕まえるなどして、鳥を捕まえていきます。

ちなみに鳥を解体する際は、いちいち羽根を引っこ抜くよりも、皮ごと引き剥がした方が効率がいいそう。

もし漂流して鳥を捕まえた際は試してもらえればと思います。

北極・南極漂流編

世界は広いもので、北極、南極という極寒の地域で漂流してしまった事例もあります。

極地の漂流は、太平洋漂流よりも気温も環境もより過酷となります。

著者の椎名さんもマイナス50度のロシアの極寒の地を訪れたことがあるようですが、現地の人に「水を飲んだら死ぬ」と本気で注意されたそう。

極地探検というと、アムンゼンとスコットの南極点競走が有名ですが、ノルウェーのアムンゼン隊は無事生還したものの、イギリスのスコット隊は凍傷や雪嵐のために全滅しています。

そんな過酷な北極、南極の世界の中で、漂流者たちは何を食べていたのか紹介していきます。

シロクマ

生物の生存が難しい極地にいる動物は限られていますが、まずはシロクマです。

かつて北極に北極の氷山の上に情報収集基地を設けようとしていたソビエト連邦は、パパーニンという人物を実験漂流に派遣します。

そんな彼らは計画的に漂流を行うわけですが、漂流して9ヶ月目にして、シロクマの親子を目にし、それらを銃で仕留めて初めて狩りに成功したようです。

ちなみに後述するアザラシは脂っこくしつこい味で、シロクマの肉の方が味は良いとのこと。

また、シロクマの肝臓は刺身で食べると絶品のようですが、食中毒を起こすため食べない方がいいそうです。

アザラシ

水族館でよく目にするあの可愛らしいアザラシも、北極では大事な食糧です。

氷盤の空気穴から顔を出したアザラシを鉄砲で撃つことで捕獲したそう。

漂流者たちはアザラシの肉、脂肪、肝臓を使ったスープにして食べたそう。

ちなみに椎名氏が食べた生のアザラシを食べたそう。感想や食べ方については以下の通り。

「牛や豚などよりも脂が強いけれど歯応えのある肉はすぐに慣れ、いかにも栄養になりそうでなかなかうまかった。心臓、肝臓は柔らかく、血や腸の中身などは啜って飲む」

また、別の漂流者によると、肝臓は繊細な味わい、アザラシの脳みそはアザラシ脂でフライにすると非常に美味とのこと。

ちなみに、エスキモーにとってはアザラシは生で食べるもののようです。

ペンギン

あのキュートなペンギンたちも、残念ながら漂流者の前では食糧になります。

かのアムンゼンとスコットに続いて南極大陸横断に挑戦したエンデュアランス号の隊員たちは、アデリーペンギンの群れを見かけると、殴打できる道具を持って襲い掛かり、六十九羽も仕留めたそう。

そんなペンギンたちは、心臓、目玉、舌、爪先、その他訳のわからないものを煮込まれ、スープとしていただかれたよう。

歴史を見れば、ペンギンはその脂肪の多さから燃料のために捕獲されてきたこともあるので、なんとも不便な生き物とも言えます。

終わりに

いかがだったでしょうか。

今回紹介した『漂流者は何を食べていたか』という本自体が数ある漂流記の総集編というか、要約のようなものであったため、この記事ではよく出てくる生き物について取り上げました。

ちなみに、今回紹介したのはあくまで一部で、その他にもサバヒー、トリガーフィッシュといった聞いたこともない魚も登場します。

この本で取り上げられている漂流記の多くは絶版となっているとのことですが、現在でも購入可能なものを探してみたので、それを紹介して終わりにしたいと思います。

『奇跡の生還』は太平洋の漂流記になりますが、転覆した船に住む形で漂流したため、非常に多くの物資が手元に残っており、著者も「大海原のレストラン」と呼ぶような魅力的な料理を、漂流中も作っていました。

こちらは考古学者がコロンブスの航海で使用した船にそっくりそのまま似せた船で航海をしたという航海記です。

大西洋にて事故に遭遇し、なんとゴムボートで76日間漂流し生還するという、驚くべき漂流記です。しかもたった一人での漂流だったため、心細さとの戦いも大きかったと思います。

こちらは椎名誠さんがあとがきを手掛けている作品です。出版までの経緯も『漂流者は…』で書かれています。こちらは文庫でも電子書籍でも購入可能です。

こちらは南極探検記になります。

探したところ、南極や北極の漂流記で残っているのはこの作品だけでした。

どれも中古しかなかったり、新品も限りがあったりと品薄のものばかりなので、興味を持たれた方はすぐに購入した方がよいかと思います。

(私は紹介したものすべてをすぐさま購入しました)

それではー。

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