「忙しくてやりたいことが何もできない………」「日々の仕事に追われて一日が終わる………」といった悩みは、現代人の常なわけです。
時間管理は当ブログでも重要テーマの一つで、度々取り上げています。
上記の記事の内容を実践してかなり改善はされてきたものの、「時間が足りない……」という思いは依然としてあるわけです。
今回、そんな時間管理について、今までにはなかった視点で語られていた本を読んだので紹介したいと思います。
それがこちら。
ハイラム・W・スミスの『タイム・クエスト』という本。
こちらは『7つの習慣』で有名なフランクリン・コヴィー社の元会長であり、講演家でもある著者が、時間管理について語られている本になります。
この題の「心の安らぎを得る」という部分が、時間に対して欠乏感のある今の自分にクリーンヒットして今回読むに至ったわけですが、読了して「なるほど、こんなところから時間管理を考えるのか」と驚かされました。
個人的に根幹だと思った部分を紹介すると、「自分の価値観を明確にして、その価値観と一致する行動に時間を取ろう!」というもの。
本著には多くの重要な視点や考え方が書かれていますが、今回はその部分に絞って、心の安らぎを得るための時間管理について書いていきたいと思います。
それでは、いってみましょう!
自分の価値観(自分にとって大切なもの)を明確にする
ベンジャミン・フランクリンの名言に「もし貴方が人生を愛しているなら、時間を浪費してはならない。人生は時間によってできているのだから」というものがあります。
フランクリンは人生について若い時期から相当考え込んでいたようで、22歳の時に彼は「自分の人生の中で最も大切なものはなんだろうか」ということを考え、自分にとって重要な十三の価値観を定めます。
1.節制 飽くほど食うなかれ。酔うまで飲むなかれ。
2.沈黙 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。
3.規律 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
4.決断 なすべきをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
5.節約 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ。
6.勤勉 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。
7.誠実 詐りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出すこともまた然るべし。
8.正義 他人の利益を傷つけ、あるいは与うべきを与えずして人に損害を及ぼすべからず。
9.中庸 極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。
10.清潔 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
11.平静 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。
12.純潔 性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行い、これにふけりて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず。
13.謙譲 イエスおよびソクラテスに見習うべし。
『自伝』(第6章) ベンジャミン・フランクリン著
著者のハイラム・W・スミスは、ベンジャミン・フランクリンになぞらえて、我々も自分の価値観を明確にする重要性を説いています。
「価値観」と言ってもそんなに堅苦しい話ではなく、「経済的に裕福でありたい」「健康でありたい」「家族を大切にしたい」という、自分にとって大事な事柄を優先順位の高い順番に並べるだけです。
「えっ、時間管理がしたいのになんで価値観の話なんだ?」「なんでそんなことしなくちゃいけないんだ?」と思うかもしれませんが、これがものすごく重要です。
何故なら、我々が日々時間に追われていると感じたり、欠乏感に見舞われている原因は、自分が本当に納得できる時間の使い方ができていないからに他ならないわけです。
自分が心からすべきだと思っているをしている時に「忙しい!」「時間が足りない!」と感じる人はおそらくいないでしょう。
つまり「心の安らぎ」とは価値観と日々の行動が一致したときに生まれてくるものなのです。
だからこそ、「自分の人生の中で本当に大切なことはなんなのか」という価値観を明確にして、そのために時間を使うことが重要だと本著では述べています。
例えば、もしも「健康でありたい」ということを大切にするなら仕事終わりにテレビを観るところを運動や自炊に使ったり、「経済的不安を抱えたくない」のであればスキマ時間に副業や投資の勉強をする、といったことです。
小さな変化かもしれませんが、自分の人生の大切なことに対して費やす時間を持つことで、ただスマホでゲームをしたり動画を観るよりも、ずっと満足感のある時間になります。
それがタイトルにもある「心の安らぎ」につながっていきます。
また、これは大胆な話ですが、この時間管理は「仕事をしている時間自体」も含まれています。
本の中では、弁護士に就職する直前の妻帯者の男が価値観を明確にした結果、「作曲家になりたい」と思い直し、弁護士の道を完全に断って音楽学校に入り直すエピソードが載せられています。
安心領域(コンフォートゾーン)を脱出する
とはいえ、人間というのは不完全な生き物。
「健康でありたいなぁ」と思ってもジャンクフードを食べたり、「経済的に裕福に……」と思ってもスマホゲーに課金してしまったりするわけです。
これがどうして起こってしまうかというと、その自分でも「いけない」とわかっている生活が、自分の「安心領域」となってしまっているからです。
本著では「快楽と怠惰の習慣」と書かれていますが、おおよそコーチングの業界ではよく「コンフォートゾーン」と呼ばれているものですね。
我々は良くも悪くも、現状を維持するようにできています。
ダイエットや新年の目標設定をしてもうまくいかないのは、無意識の部分が不安定な「新たな目標」よりも今の「安心できる現状の習慣」を維持するようにしてしまっているのです。
これについては快楽や怠惰に限った話ではありません。
仕事に不満があっても、「それさえ我慢すれば」と多くの人は現状維持を選んでしまいます。
前の項で定めた「価値観に基づいた有意義な目標」というのは、まさにその安心領域(コンフォートゾーン)と対立するものです。
この安心領域を脱して、自分の望む結果を出すための行動を起こすには、少なからず努力が必要になってきます。
しかし、一度安心領域を出れば、今度はその望む行動を行う自分が安心領域になるので、これまでのような努力も必要なく行動していくことができます。
「でも、そんな努力できるのかなぁ……」「そんな意志力ないよ……」という方は、僕も試してみて実際に効果があった「意志力を高める方法」を5つまとめてあるので、以下の記事を読んでみてはいかがでしょうか。
僕自身仕事のストレスから部屋も生活もぐちゃぐちゃで、身体も太り余暇も酒とゲームだけで過ごしていたダメダメだったわけですが、それから数年で23kg痩せて毎朝6時半に起きて部屋の掃除と読書と執筆活動に充てることができるようになった具体的な方法だけまとめているので、効果はお墨付きです。
計画を立てて、実行する
自分の価値観、自分にとって大切なものが定まったら、次はどうすればいいかというと、具体的な計画を立てていきます。
本著の中では「生産性のピラミッド」と呼ばれているものです。
まず「価値観」という大きな土台があって、そこから「長期目標」を定め、そこに至るまでの「中間ステップ」を明確にして、「日課のリスト」に落とし込む。
この「日課のリスト」と巷によくある「タスクリスト」「ToDoリスト」との違いは、「タスクリスト」「ToDoリスト」は日々の緊急度の高い仕事ばかりが羅列されているのに対して、前者は自分の人生の目標に根ざした重要度の高いものだけがリストに挙がってくること。
※重要度の高い仕事をすることが以下に大事かについては以下の記事でも紹介しているのでよければ。
一見すればただの目標達成のためのロードマップにも見えますが、それ以上の意味があります。
自分が心から納得できる行動を取ることによって、自己コントロール感を得て、「心の安らぎ」を得ることができるわけです。
そのために、毎朝15分は必ずその日の計画を立てる時間を取り入れることをこの本では薦めています。
また、その日々の計画を組んでいく上で、重要な事柄がバッティングすることがあります。
例えば、ある家族持ちの男が、家族と過ごす予定と仕事の付き合いの予定がバッティングしたとしましょう。
その人にとっては、「家族を大切にする」も「経済的不安をなくす」も価値観の中にある重要な事柄です。
その場合、価値観の中で優先順位が高いものの予定を優先するという基準を設けることができます。
例えば、本著の中には著者のハイラム・W・スミスの価値観が16個紹介されていますが、彼の場合は「傑出した夫、そして父親でいる」という価値観は5番目で、「経済的に自立している」という価値観は12番目にきているので、彼ならばこの場合家族と過ごすことを優先するでしょう。
このように、価値観を定めることは、日々の計画を立てる中で、より納得度の高い取捨選択をすることにもつながっていくのです。
終わりに
いかがだったでしょうか。
自分自身、好奇心旺盛で割となんでもやってみたくなる性分で、そのおかげでひとつひとつにかける時間がない状態が長く続いていたわけですが、「人生の中で自分が本当に大切なものはなんだろうか」と考えた時に、新たな視点で自分の日々していることをもう一度見直すことができ、日々の計画の質が変わってきた気がしています。
(このブログの更新頻度が最近少し早くなっているのもそのためです)
また、今回は省きましたが、本著では「生産性のピラミッド」と並んで重要な考え方として「リアリティ・モデル」というものも紹介されています。
これは行動と気持ちを合致させて、心の安らぎを得る時間の使い方をしていく上でとても参考になる考え方なのですが、気になる方は是非本著を手に取ってみてはいかがでしょうか。
僕は実際に購入して読みましたが、普通にお金を出す価値のある書籍だったなぁと思っています。
それではー。