唐突ですが、久しぶりに魚が捌いてみたくなったわけです。
皆さんは、辛い出来事にぶち当たった時、また深い悲しみに遭遇した時、心の支えとなるものはあるでしょうか?
大きな困難に心が揺らいだ時、自分に自信を与えてくれるものは、ありますでしょうか?
僕は、「魚が捌ける」こと。
辛い涙の夜や、すべての自信を失いながら自己否定に苛まれたあの日も、悲しみに暮れながらふと心に浮かぶわけです。
「あぁ、そうだ、でも俺魚が捌けたんだ」、と。
ライバルのあいつとの敗北や、結婚を考えていた彼女に別れを告げられたとき、あの悔しさや憎しみに似た感情がうずまくなかでも、救いの光のようにこの言葉がよぎるわけです。
「でも俺、魚捌けるんだよね?」、と。
今回も、状況が状況のなか、自らの失った一部を取り戻すために、魚を買いに行くことにしました。
向かったのが、地元の漁協の直売所。
※画像はイメージです
朝の9時50分。まだ開店して間もない状態でしたが、昨今の娯楽のなさのおかげか、その時点で長蛇の列ができていました。
その日は大漁だったのか、飲食店が閉まっているせいで余っているのか、かなり豊かなラインナップ。
しかも安い。
サイズによって違ってきますが、黒鯛が一尾780円、ホウボウが580円と、想像よりもかなり安かったです。
色々迷った中で、最終的に選んだのがこちら。
これ、なにかわかるでしょうか。
実はこれ、ボラという魚。
このボラ、釣り好きには大の嫌われ者でお馴染みのよう。
というのも、ボラはその水域の水の臭いが移りやすいので、釣れても臭くて食べれたもんではないのだとか。
また、知人によると、チヌ(黒鯛)釣りのときにボラが釣れるとチヌが寄り付かなくなるので、その点でも厄介者なのだとか。
とはいえ、綺麗な水域で釣れたものは臭いもなく、また内臓をしっかり処理すれば、気にはならないよう。
また、一時は高級魚としても扱われていたのだとか。
実際、僕は数年前に一度ボラを捌いて食べたことがありますが、普通の白身魚といった感じで美味しかったです。
そういえば、どこかの寿司屋では柚子漬けにして出していたような。
今回は、そんなボラを捌いて、念のために臭い消しの調理で食べていきたいと思います。
それでは、いってみましょう!
ボラを捌けなかった
さて、早速ボラを調理していくわけですが、ここでアクシデントが発生。
それは直売所でボラを買うことを決断して、おばちゃんに話しかけたときのこと。
「ボラください」と言うと、そのおばちゃんはにこやかに、「このボラどうやって食べるの?」と話しかけてくれたわけです。
なので、顎を少し上げ、目を細めて少しばかり微笑んだ状態(通称:ドヤ顔)で、「刺身にしようかなー、と」と答えました。
「わかるか?俺は魚捌けるんだよ?」とでも言いたげな感じで。
すると、「あぁ、刺身ね」と言うなり、おばちゃんはボラを尾からひっつかみ、「じゃ、先に代金だけ払っておいてね」と番号札を渡され、そのまま扉の向こうに消えていきました。
茫然とおばちゃんの後ろ姿を見守りながら、番号札をしばらく見つめ、ふと気づきました。
「あぁ、『どうやって食べるの?』って、世間話じゃなくて加工の仕方を聞いてたのか……」、と。
魚を捌くために来たのに、まさかの事態。
まぁ、起っちゃったことは仕方がないので、列に並んで会計を済ませ(1尾800円でした)、番号札の番号が呼ばれるのを今か今かと待つこと約30分。
やっと、捌かれたボラが出てきました。
それがこちら。
きれいに捌かれてますねー。
ちなみに、この右端にある丸いやつは、「ボラのへそ」と呼ばれる胃壁にあたる部分。
捌いたおっちゃんが、「これ塩焼きにしたら旨いから」と付けておいてくれました。
さて、魚を捌くという当初の目的からは外れてしまったものの、忙しい中捌いてくれたおっちゃんに感謝しつつ調理に入っていきます。
昆布〆にしてみた
一品目は、昆布〆でいきます。
昆布〆というものをこれまでしたことがなかったのですが、調べてみるとそれほど難しいことはしていないよう。
まずは、ボラを切っていきます。
そして、次に昆布を取り出し、日本酒をつけたキッチンペーパーで拭いていきます。
ちなみに、家にこの形の昆布しかなかったのでそれを使用していますが、本来は平らなタイプの昆布を使用した方がいいです。
そうしないと味にむらが出るようですが、第一めちゃくちゃ乗せづらくなります。
昆布の反りをどうしても直すことができず、こんな感じになりました。
そして、乗せ終わったら、軽く塩を振りかけ、さらに上に昆布をかぶせていきます。
うん、かぶらない。
出来上がったら、ラップでくるんで、冷蔵庫で数時間寝かせます。
本来は1日くらい寝かせた方が昆布の香りや色味も移っていいらしいけれども、晩酌に間に合わないので見送りました。
そして完成したのがこちら。
やっぱりちょっと色うつりがない感じ。
本来ならべっこうに近い色味になるよう。
なめろうにもしてみた
続いて二品目が、なめろう。
なめろうは細かく刻んだものにすりおろした生姜や味噌、醤油などを加えたもの。アジなんかが定番ですよね。
まず、ボラの柵を細かく切っていきます。
ちゃんと骨抜きまでしてくれているおっちゃんに感謝。
あとは、すりおろした生姜、味噌、醤油、お好みでにんにく等を入れ、かき混ぜるだけ。
調味料の調節は、いつも食べながらしてます。
(だから完成時にはかなり減っている)
個人的には味噌はけっこう入れた方が美味しいですね。あと、ボラのように脂の少ない魚は、MCTオイルを少し入れるようにしています。美味しくなりしかも健康的。
それで、出来上がったのがこちら。
長ネギなんぞあれば少しは映えたかもしれないけれども、あいにく今は切らしてました。
食べた感想とか
で、食べてみたんですけど、ボラの身にくさみはなく、普通に美味しい白身魚という感じ。
さすがにプロのおっちゃん。いい捌きをしてくれた。
昆布〆にすると、身もねっとりしていて、塩も振ってあるのでそのままでも食べれる感じ。
昆布の風味もよく出ていました。
なめろうは、安定の美味しさ。でも、白身魚なのでアジ等の青魚で作るよりあっさりした風味ですね。
水族館でボラを見かけたときは、「あ、臭みあるけどきれいに捌けば普通に美味しい魚だ!」という気持ちで眺めるといいと思います。
それではまたー。