100日後に死ぬワニの弔いとして、ワニのベストな食い方を探す その1
100日後に死ぬワニの弔いとして、ワニのベストな食い方を探す その2
100日後に死ぬワニの弔いとして、ワニのベストな食い方を探す その3
あれほど騒いでいた『100日後に死ぬワニ』も、今や誰も口にすることがなくなった。
盛者必衰。奢れるものは久しからず。あのワニはこの日本に彗星の如く現れた、大量生産大量消費の現代社会に対する一つのメッセージだったのかもしれない。
そんなワニを弔うための料理集も、今回で一旦最後にしたいと思う。
ワニ肉は正直まだ大量にあるのだけれど、メンタル面から言って、定期的にあのドブの臭いを嗅ぎ続けることに限界を感じてしまった。
この文章を書き終わったら、友人やご近所さんたちに「海外から取り寄せた、高級なジビエ肉がありましてねー」と笑顔でうそぶきながら、解凍したワニ肉を配って回りたいと思う。
なにひとつ、嘘は言っていない。ただ、必要なことを言っていないだけだ。
『100日後に死ぬワニ』が消費社会に向けたメッセージなのだとしたら、あのワニ肉は、目につくものすべて手当たり次第に消費する現代の在り方を問う、一種のメタファーなのかもしれない。
だって、これだけ牧畜の栄えた現代で、わざわざワニを食う必要なんて、どこにもないじゃないか。。。
それでは、最後のワニの調理に入っていこう。
【調理】世界の中心で愛を叫ぶワニ〜Beautiful World〜
ワニの手強さは、なんといっても脂肪についた、あのドブのような臭いだ。
(気になる方は是非塩焼きでどうぞ)
これまで、生姜、ニンニクといった臭み消しの調味料を用いて調理してきたものの、この大敵であるドブの臭いに対抗することができていなかった。
その理由は、おそらくこうだ。
これまで作ってきた料理でのそれらの使われ方は、あくまで「調味料」として、つまり味の調整のために使われていたからだ。
つまり、ワニ肉ほどの強大な敵に立ち向かうには、臭い消しに特化した料理でなければならない。
前回のワニチリの時点で半ば諦めていたものの、あるとき光明の如く、一つの料理が頭に浮かんだ。
それがこれだ。
そう、ビーフジャーキー。
薄切りにして、ハーブやニンニクの入った液に長時間漬け込み、ワニ肉自体の水気ごと脱水して煙の中で1時間も置いておけば、恐らくあのドブの臭いも取り除けるのではないか、と。
そうと決まれば、早速調理に入っていく。
まず、ソミュール液と呼ばれる、塩と砂糖、それにハーブ類やらが混ざった液に漬け込む。
そして、漬け込むこと丸一日。
通常は、その後肉を水に漬ける「塩抜き」と呼ばれる工程があるのだが、塩がどれくらい抜けたか味見をしなければならず、ワニ肉を食べることが心底嫌な今回はあらかじめ塩の量を通常よりも少なめにしている。
別に保存食にするつもりはないし、それでいいのだ。
キッチンペーパーにワニ肉を広げ、冷蔵庫で乾燥させていく。
そして、乾燥が終わったら、いよいよ燻煙に入っていく。
燻製器を用意して、ウッドチップとピート、それに砂糖を入れていく。
ちなみに今回はサクラとウィスキー樽のオークを使用している。
そして、あとは完全に乾燥しきったワニ肉をセットする。
ここまで乾燥させる気はなかったのだが、燻煙をしてしまえば食べなければならないので、かれこれ一週間ほど先延ばしにしていた。
※そんな僕たち先延ばし屋のための、心が軽くなる効率的な「先延ばし思考」についての記事はこちら。
ちなみに、今回は手羽元の燻製とポークジャーキーも同時並行で作っている。
そして、燻煙すること50分。
できたてのワニジャーキーが、これだ。
見たところ、普通に乾燥しきった肉だ。
あの憎き脂身も付着しているが、果たして味はどうなのか。
早速、実食に移っていく。
【実食】ワニ、真心を君に~You Are Not Alone~
ここからは、実食後の感想を書いていく。
【風味】☆☆☆★★
正直言うと、ハーブの効いた塩っ辛いだけの味。
でも、たったそれだけでも星みっつはあげたい。なぜなら、ごく普通に食べることが可能なのだから。
【食感】☆☆☆★★
乾燥しきった固い肉。それ以上でもそれ以下でもない。
でも、たったそれだけでも十分すぎるほどなのだ。ワニを食べていると、普段の僕たちの食生活がどれだけ満たされていたのかを思い出させてくれる。
【香り】☆☆☆★★
これが、驚いたことに、あのドブのような脂身の臭いが消え去っていたのだ。
長時間の漬け込みと長時間の乾燥。それに燻煙によって、ようやく脂身のドブ臭さを消し去ることができた。
その代償としてキッチンが煙の臭いになってしまったが、それも仕方のないことだ。
【総合評価】☆☆☆★★
ぶっちゃけ美味しくはないんだけど、普通に食べれる。
なによりも、食べれるってことが、大事だと思う。
普段から美味しいお肉を出荷していただいている牧畜業の方々には感謝が絶えない。
【まとめ】
今回、初めてかろうじて人に出せるレベルの料理にすることができた。
これを読んでいる人で今後もし友人がアマゾンあたりでワニを仕留めて手土産に持ってくることがあったなら、差し当たって当ブログでは「ワニジャーキー」にすることを推奨する。
でも一番は、なんといってもワニ肉になんて手を出さないことだろう。
君子危うきに近づかず。
やはり、安心安全が一番なのだ。
まだ冷凍庫に眠っているワニのことを思うとまだ憂鬱な日々が続きそうだが、とりあえず友人に食わせたいと思う。
それでは、また。