現代人の感情と時間を蝕む『スマホ脳』について解説する ②

書籍

スマホやSNSが我々現代人に与える悪い影響について語っている書籍『スマホ脳』ですが、前回は人間が進化の過程で得た生存ための本能的な部分について説明をしました。

ざっくりまとめると、

・我々は周囲の危険を回避するために、注意散漫になるようできている

・生存のためには危険に関する情報(災害、敵対相手について)が最も貴重なので、人間はポジティブ情報よりネガティブ情報を優先する

・どれだけ小さくても危険を察知すると、脳の扁桃体が危険信号を送って、緊張状態を作り出す

・脳は新しい情報やランダムな報酬を前にした時、快楽物質であるドーパミンを分泌する

といった感じ。

今回は、そんな人間の習性をどのように利用して、SNSやスマホの開発者たちは人間の脳をハッキングしてきたのかを紹介したいと思います。

ちなみに、スマホやSNSの開発者たちが上記の要素を利用して設計したというのは、昨今話題の陰謀論などではなく、本人たちが語っている公然とした事実です。

かのfacebookの元副社長パリハピティヤは「私たちが作ったのは短絡的なドーパミンを原動力にした、永遠に続くフィードバックのループだ。それが既存の社会機能を壊してしまった」と述べています。

その他、あらゆる開発者やCEOたちがその事実に触れ、中には『時間術大全』のような、開発者たちがSNSに支配されない生活法を提唱しているという始末。

そのため、このSNSやスマホの仕組みについて理解することは、今後のスマホとの付き合いを考えていくうえで参考になるかと思います。

ぜひ一度最後までご覧いただければと思います。

通知音は報酬のシグナル

前述の通り、我々は基本的に注意散漫な状態であり、危険に対して過剰に反応するようにできています。

それでも現代社会では仕事や勉強の場面で集中状態を求めるため、我々は頑張って集中状態を作り出しています。

そんな中で、我々の集中状態をいとも簡単に崩すのが、スマホの通知音。

この通知音が非常に巧妙で、なんとスマホから鳴った時に人間の脳の中の扁桃体が発火するように設計をされているのです。

通知音はどのスマホどのアプリでも似たような音になっていますが、それも偶然の一致ではありません。

さらに恐ろしいのが、この我々の注意を引く通知音が、脳の快楽報酬系と結び付けられている点

スマホから通知音が鳴ったとき、我々はその内容がわからないものの、無意識に友人からのメッセージやSNSのイイネ、フォロー、ソーシャルゲームの報酬といったものを期待するかと思います。

それは前述の脳が最もドーパミンを出すという、新しい情報と、何が出てくるかわからないというランダム性に対する期待を意味しています。

そのため、通知音を聞いた瞬間から、我々の脳はスマホに意識が移るのと同時に、快楽物質が分泌されて、スマホを開くように促すわけです。

スマホ、SNSはスロットマシンを模している

スマホやSNSの設計の際、開発者たちは「世界でも最も人を狂わせた機械」と名高いスロットマシンを参考にしています。

そのスロットマシンの一連の動作を見てみましょう。

①原色に近い蛍光が輝くマシンの機体にコインを入れた後、レバーを引きます。

②すると目の前の画面のリールが回転し、しばらく待たされます。

③そして止まったとき、結果が表示され、当たった場合は機体の蛍光が目がチカチカするほど点灯し、甲高いメロディと同時にコインが吐き出され、外れた場合は何事もなかったかのように次のゲームへと移っていきます。

このスロットマシンが人間のランダム性を好む習性を利用していることは先ほど述べましたが、このマシンの怖いところはそれだけではありません。

まず、①に書いた、機体に付けられた蛍光ですが、これはスロットマシンに人の目が移ることに一役買っています。

スマホのホーム画面を見てもらえればわかりますが、原色に近いビビッドな配色のアイコンが立ち並んでいます。

これも意図的なもので、そうすることで注目を引き、タップされる確率を上げているのです。

さらに、②のリールの回転にも秘密があります。

回転している途中、我々は止まるまでの間少し待たされることになります。

この待たされるまでの時間があった方が、脳のドーパミンの分泌量が高いことが研究結果からも明らかになっています。

これを利用しているのが、SNS。

例えばインスタやTwitterを開いたとき、ロゴマークが表示された後、ホーム画面が表示されるまで少し待たされることになります。

実は、あの待ち時間は画面のロード時間でもネット通信のラグでもありません。

最も脳から快楽物質が出る形になるよう、わざとホーム画面が表示されるのを遅らせているのです。

それも、コンマ0秒単位で遅延の時間をコントロールして。

そして③の結果の表示は、まさにランダム性を表しています。

レバーを引き、無数のハズレの中で当たりを引いたとき、脳は強い快楽物質を分泌し、また当たるまでの過程もずっとドーパミンを出し続けます。

これぞ、まさにSNSのスクロールです。

スクロールして大量のゴミのような情報を流し見する中で、自分が興味のあるものに触れたとき、スロットマシンの当たりにも似た快楽物質を分泌するのです。

そのため、我々は時間を制限できずにTwitterの画面をスクロールし、TikTokやYouTubeショートを見続けるのです。

スマホは視界に入るだけで集中を阻害する

そんな多大なドーパミンを分泌させてくれるスマホですが、どうやら我々はスマホが視界に入るだけで気が散ってしまうようになってしまったよう。

多くの観察研究でも、スマホが近くにあるだけでテストの点数が低下したという報告があります。

もはや、我々はスマホを開かなくても、その存在だけですでに影響を受けているのです。

他者との比較で不幸感が増す

この『スマホ脳』では、スマホを長時間利用することで、メンタルの健康に被害が出るというデータが多数紹介されています。

その精神被害の理由の一つが、SNSによって自分と他人を比較してしまうこと。

SNSのキラキラしたインフルエンサーや幸せそうな友人たちを見て、現状の自分と比較した結果、自信を失い嫉妬に駆られ、メンタルを病んでしまうのだそう。

特に若い女の子にその影響は強く出るそうです。

本書ではセオドア・ルーズベルトの「比較は喜びを奪う」という言葉が引用されていますが、常に意識に留めておきたい言葉のように感じました。

このデジタル時代をどう生きる?

そんなスマホやSNSの恐ろしさを語った本書ですが、最後にその対策を提示してくれています。

とはいえ、その方法は非常にシンプル。一例を挙げると、

・スマホの通知音を消す

・スクリーンタイムを設定する

・スマホに触れる(なんなら目に触れる)機会を減らす

・目覚まし時計など、スマホ以外で代替できるならそれを使う

・SNSのアプリをアンインストールする

・運動する

といったもの。

最後の運動の効用については今回は端折っていますが、要は運動がメンタルにもストレス対策にも健康にもいいよという話。

興味がある方は本書よりも『脳を鍛えるなら運動しかない』を参照されたほうがより詳しく理解できるかもしれません。

最後に

いかがだったでしょうか。

前々からネットでは噂になっていた本だったので、おおよその内容は知っていましたが、それでも原著に当たることで、より深い学びとなりました。

要約動画を見るのとはまた意識の変化が全然違うので、興味がある方は是非一度読まれることをオススメします。

最後に、今回前半の方で紹介した人間の本能についての箇所は、鈴木佑さんの著作でもよく触れている話題になるので、よければこちらも読まれると幸せになれるかもしれません。

それではー。

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