ローストビーフとの出会い(そして別れ)
僕とローストビーフとの出会い。それは、小学5年の春のことだった。
その頃、ちょうど東京から女の子が転校してきた。
彼女の名前はマユちゃん。僕の通っていた小学校は田んぼに囲まれた片田舎にあったから転校生が来ること自体珍しく、さらには大都会東京から来るということで、クラス中が彼女の話でもちきりだった。
実際会ってみると、彼女は色白で身体も細く、僕は同じ学年の女子と見比べながら、「これが都会っ子か」と新しい人種でも見たような気分になっていた。
最初は彼女の周りを毎日多くの人が取り囲んでいたが、それもすぐに、ほんの数日でなくなった。
結局のところ、彼女も出身地とその白い肌を除いては、自分たちとなんら変わらないことにみんなが気づいたのだ。
そんな彼女と僕は偶然お互いの家が近く、先生からも「色々面倒を見てあげてね」と半ば世話役を任されていた。それもあってか彼女の席も僕の隣になり、自然と会話することが増えていった。
話してみると、僕たちは共通点が多かった。
お互い本や古い音楽が好きで、同世代では到底通じないような話もわかり合えた。僕たちはすぐに仲良くなって、お互いの家を行き来するようになっていた。
そんなある日の夕方、いつものように彼女の家から帰ろうとしていると、彼女のお母さんが、「よかったらうちで晩ごはん食べて行かない?」と誘ってくれた。
最初遠慮していたが、彼女のお母さんは娘とは違いとても積極性のある人で、僕のお母さんに連絡を取って了解を取り、結局僕は晩ごはんをご馳走になることになった。
そこで出てきたのが、温かなクリームシチューとバゲット、それに薄切りにされたローストビーフだった。
その頃はまだローストビーフという名前すら知らなくて、なにやらお洒落で高そうな肉だということしか判別できなかった。
いざ口に入れてみると、冷たい牛肉なのに柔らかい、その不思議な感覚と、複雑な味のソースがクセになり、僕はすぐに気に入った。
「ねぇ、いつもこんなに美味しいものを食べてるの?」と彼女に聞くと、「まさか。今日は特別だよ」と笑っていたのを今でもよく覚えている。
でも結局、彼女の家でご飯をご馳走になったのは、これが最初で最後だった。
それから3ヶ月後、彼女はまた父親の仕事の都合で転勤となったのだ。
あれから十数年。
再会することはなかったけれど、今でもあの頃のことを時々思い出す。
彼女と2人で、両親の古いレコードを聞いた日のことを。そして、ローストビーフの冷たく柔らかい、あの不思議な食感を………。
材料
はい、全部嘘です。
じゃあ材料の確認をしていきましょう。
・牛もも肉……400g
・岩塩……4g
・黒胡椒……適量
・ガーリックパウダー……適量
・ローズマリー……適量
・タイム……適量
・オレガノ………適量
・オリーブオイル(サラダ油でもOK)……適量
今回は肉に対して1%の塩で調理をしていますが、別に正解はないです。
ちなみにここ数年流行りのロジカルな調理界隈の言い分によると、肉に対する最適な塩分濃度は0.9%〜1.3%ほどとのこと。
あと、ハーブ類も適当です。中華系のものを使えばそれっぽくなりますし、クミンやオールスパイス、白胡椒等を使ってもまた違った味わいになるでしょう。
僕は困ったらなんでもタイムとオレガノを入れる癖があるので、今回もそのようにしました。
調理していく
はい、では調理に移っていきましょう。
まず牛もも肉は冷蔵庫から出して1、2時間ほど放置して、常温に戻しましょう。
そのときに、岩塩とスパイス類をまぶしておきます。
それから熱したフライパンにオリーブオイルを敷き、片面1、2分ほど焼いていきます。
そして、あら熱が取れたら、肉をラップで包み、次にアルミホイルを巻いていきます。
鍋に水を張り、80度に熱したらその中に投入しましょう。
そこから弱火〜中火くらいで7分程(気温によって調整しましょう)熱します。
そして取り出したものがこちら。
みた感じはよくできています。
カットしてみるとこんな感じ。
そして、ダイソーの石のプレートに乗っけていきます。
これで完成です。
実食
前回作った時は煮込み過ぎで全体が硬くなってしまったのですが、今回はうまくできましたね。
今回は粒マスタードと、味変でわさび醤油でいただきました。
茹でた後のラップを剥がすと、肉汁がドリップしているので、それでグレービーソースを作るのも美味しいと思います。
ちなみに、ローストビーフには脂身の少ないもも肉がおすすめ。今回はスーパーで割引されていたので500円ほどで買えました。
牛もも肉は他の部位に比べて用途が限られているので、割と売れ残って半額になっているのをよく見かけますね。
高級なイメージのローストビーフですが、案外簡単にできるので、よければ一度作ってみてはいかがでしょうか。
それではー。